「キレー……。海の中ってこんなんなのかなあ」
「どうだろ……。水質とか綺麗な海ならそうかもね」
「私、あれやってみたい。あの、海潜るやつ」
「あー……スキューバダイビング?」
「そうそれ!超楽しそうだよねえ」
他愛ない話をしながら順路に従って進んでいくと、大中小様々な海の生物たちのコーナーにやってきた。水槽は通常サイズだ。
入り口近くの縦長の水槽には、大量のイワシの群れが凄まじい勢いで渦を巻き泳いでいた。
「わー……イワシがキラキラしてる」
「すごいね。何匹入っているんだろ」
「……美味しそう……」
「え?」
私の口から飛び出した言葉に、俊くんが眉を寄せてこちらを向いた。
「…………なんでもない」
そっと自分の口を両手で塞いだ。何言ってんだ。水族館来てお刺身食べたいとか思うんじゃない。
しかし、そんな私に水族館は次々に誘惑を仕掛けてきた。
太くてたくましい脚を生やした大きなタコ、固そうな甲羅に覆われた大きな伊勢海老。
もはや「美味しそう」という感想しか出てこなかった。なんだこのコーナーは。食欲増進コーナーか。



