「え、普通に寝るの遅かっただけだよ」
「なんで」
「なんでって……眠れなかったから?」
隼は箒の枝の先に両手を置くと、その上に顎を乗せて「ふーん」と言った。なんだその反応。
「隼は?」
「俺も眠れなかっただけ」
「ふーん」
同じ言葉で返しながら、ちりとりの中のゴミをゴミ箱に捨てた。
「これでいいかなあ」
「いいんじゃねえの」
準備室を見回して、床は大体掃けたことを確認する。これで十分でしょ、と思いながら、伸びをした。
「じゃ、帰りますかあ……」
「なあ、昨日にあいつに何言われたの」
伸びをしていた腕の動きが止まった。
少しの間、地球儀とかが入ってる戸棚を見つめて固まる。私はふう、と息をついて、ニコリと笑いながら腕を下ろした。
「え、何か言った?」
「昨日あいつに何言われたの」
全く同じこと2回言いやがった。



