俊くんはまた短い沈黙の後、綺麗な形の目を苦しそうに歪めて、口を開いた。
「……俺、佳菜の誰とでも仲良くなれるとこ、好きだけど。たまに、すげームカつく」
俊くんにこんなにハッキリと強い意思をぶつけられたこと、なかったから。
「……………」
私は呆然としてしまって、何の言葉も返せなかった。
俊くんもそれ以上は何も言わず、静かに踵を返し、駅の方へ歩いていく。
私は、その背中を追いかけられなかった。
*
その後、ひとりでいるのはあまりに寂しくて、結局みんなとスイーツを食べに行った。
ちょっと泣きながらドーナツを頬張る私を、みんなが慰めてくれた。
みんな何があったのか聞きたそうだったけど、その場には隼がいたし、晃と学にも気を遣わせたくなかったから、くわしい事情は話さなかった。
その日の夜はなかなか眠れなかった。
このままだったらフラれるかもとか、でもどうしたらいいんだとか、いい彼女になれない自分への怒りや後悔とか、色んな不安や迷いが頭を悩ませた。



