「……なんかボーッとしてんな」
2人を見ながら歩いていると、横から隼がそんなことを言ってきた。
「……別に?普通だよ」
「なんか今日のお前、色々雑なんだよ。顔面も髪型もボヤッとしやがって」
「意味わからんこと言うな。今日はちょっとメイクも髪も手抜きなんだよ。顔面ボヤッとしてんのは元が地味顔だからだボケ」
なんて失礼なこと言いやがるんだ。日本人なんかみんな顔面ボヤッとしてんだろ。
「ふーん………あ、ちょい待ち」
校門の少し手前で、隼が私の歩みを止めた。
「ん?何」
「シュシュ落ちそう……てか、ポニーテール曲がってんじゃん」
隼が私の後ろに立って、崩れかけのポニーテールに触れた。
髪ゴムを取って、どうやら結び直してくれるらしい。
「櫛、持ってねえの」
「あるよ。てか何、あんた女子の髪とか結べんの」
「あ?ナメんな。よく妹の髪やらされるんだよ」
制服の胸ポケットに入れている小さなコームを渡すと、隼は意外にも手際良く髪をまとめていく。
私達に気付いた璃子たちは、近くで立ち止まって待ってくれていた。



