階段の最後の一段を降りると、ちょうど目の前に水溜りがあって、ぱしゃんと音を立てて踏んでしまった。
「うわっ」
スニーカーにじんわりと水が染みていく。
うええ、気づかなかった。
足元の不快な冷たさにゲンナリした。
「佳菜ぁー?どーしたのー、さっきから話交ざんないけど。どっか行きたいとこ無いの?」
ずっと黙っている私が心配になったのか、璃子が首を傾げながら私に声をかけた。
「……あ〜。んーと、私はどこでも良いよー」
「えー。どしたの佳菜、珍し。いっつも一番に色々言うのに。このままだとスイーツ漁りになっちゃうけど良いの?」
「え、いいじゃんそれ。行こ行こ」
スイーツ食べよスイーツ。甘いもの食べて憂鬱な気持ち忘れちゃお。
「じゃあそーしよっかあー」
璃子が校門に向かって再び歩き始める。みんなもそれに合わせて一緒に歩き出した。
晃はまだ「えースイーツー?」と文句を言っている。璃子が何かを言い返して、お約束の痴話喧嘩が勃発しているのが見えた。



