「えーと……俊と佳菜ちゃん。色々振り回してごめん。でも後悔はしてない」
「イッちゃん!!」
また平手打ちが飛びそうになって、寸前で先輩が避けた。
それがさらに沙彩さんを怒らせたのは言うまでもないけど、先輩はむしろ楽しそうに沙彩さんの攻撃を避けていく。
先輩は立ち上がると、沙彩さんの文句を適当に受け流しながら、私たちの方を見た。
「まー、そういうことだから。佳菜ちゃん、色々ごめんな。俺が佳菜ちゃんに言いたいことは大体話したから、まあ頭の片隅にでも置いといて。これからも俊をよろしくね」
私が言葉を返す前に、先輩は「じゃ」と言って颯爽と走って逃げて行った。沙彩さんがあとを追っていく。
うちの学校イチの美男美女カップルが、よくわからないまま嵐のように去っていった。
……えーと。突っ込みどころが多すぎて、まとめられないんだけど。
「とりあえず、俊くん、放してくれる……?」
ずっと俊くんに後ろから抱きしめられていた。
ずっとこのままでもいいくらいには幸せなんだけど、これじゃまともに話ができない。



