ベンチに座ったままの先輩を見ると、特に驚いた様子もなくニヤニヤ笑っていた。
「俊ー、思ってたよりずっと早かったなあ。相当走ってきたろ?」
「当たり前じゃん。あんな写真とメッセージ寄越されたら誰だって走ってくるよ」
え、なに?写真……?
……まさか。
「せ、先輩!?あの写真、俊くんに送ったんですか!」
「アハハ。せーかーい」
全く悪びれなく笑顔で答えた先輩に、怒りを通り越して目眩がした。
「なに……?どういうことですか先輩。なんで写真送ったんですか、なんで俊くんが来たんですか」
「佳菜もなんで一兄とふたりでいるんだよ」
先輩に尋ねたつもりが、なぜか俊くんに尋ねられた。
……しかもなんか若干怒ってる気がするんですけど……。
今もがっちり抱きしめられてるので、首だけ後ろに向けて、恐る恐る俊くんを見上げる。
彼の綺麗な瞳が、怒ったような焦ったような、複雑な色をして私を見ていた。
それを見ただけで、私はすっかり萎縮してしまった。
だって、あの俊くんが怒るなんて。こんな顔するなんて。



