自分の友達がどんどん瀬戸先輩の手中に落ちていくのを呆然と見ていると、最後に先輩は私へ視線を戻して言った。
「ってことだからさ。佳菜ちゃん、行くよね?」
マジで悪魔だ……。
もう恋人探しをする気満々の璃子と晃を目の前にして、『行かない』とは言えない。
私が『行かない』って言ったら、たぶん先輩はこの話を白紙に戻すだろう。
みんなで遊ぶんなら、デートじゃない。だから罪悪感を感じる必要はない。
くそう、やられた。
「……わかりましたよ。行きます」
渋々了承すると、先輩はうんうんと嬉しそうに頷いた。悔しいくらいいい笑顔!
気づけばもうすぐ始業のチャイムが鳴る頃になっていた。
先輩が「じゃあまた放課後にね〜」と上機嫌で教室を出ようとしたら、私の真横から「あの」と声がした。
「俺も行きます」
えっ。
私の横にいたのは、隼だ。
隼はわかりやすく腹を立てた顔をしていて、半ば先輩を睨むようにして見ていた。



