ずっとずっとこっちを向いてほしいと思ってたそれが、今になってようやく私を見ている。
だけど今の私に芽生えたのは、少しの虚しさだけだった。
……なんか悲しいんだよ。
目の前の、好きだったひとを見てると。
ああ私、本当に情けない恋をしたんだなあって。
「瀬戸先輩。今のそいつ彼氏しか眼中にないんで、一緒にいてもつまんないと思いますよ」
真後ろから突然声がして、驚いた。
振り返ると、仏頂面の隼が私の後ろに立っていて、瀬戸先輩を見ていた。
は、隼……?
「……えー、そうかな。面白い子だと思うけどなあ、佳菜ちゃん」
いきなり登場した隼に対して、瀬戸先輩は特に驚きもせずに言葉を返した。



