俊くんがさっきの先輩の話をどう捉えたかわからないけど、言うべきことは言っておかなきゃ。
黙ってちゃダメだ!
「……あの、佳菜」
「俊くん!」
タイミング悪すぎて被った。
私の大声にびっくりしたのか、俊くんは面食らった顔で私を見ている。
「ご、ごめん!あの、その、私から先に言わせてください!瀬戸先輩のことは確かに好きだったけど……今はもう先輩なんか私にとってミジンコ以下の存在っていうか!」
何も考えず勢いのまま言っていたら、先輩がミジンコ以下の存在になってしまった。
さっきのことがあったから、私もちょっと攻撃的になってるのかもしれない。許せ先輩。
「正直、最近は俊くんのことで頭いっぱいというか、先輩が入る余地とか全くないから、その……どうか誤解なきよう!」
手を合わせてお願いすると、少しの間、また沈黙が落ちた。
そのまま俊くんは静かに私の手に触れると、さりげなく片手を握られ、無言で歩き始めた。なんか自然に手繋げた。きゅん。



