「俊くんは、どっか行きたいとこある?」
「いや、特には……」
「あれ、俊?」
次に行くところを話しながら歩いていたら、聞き覚えのある声が俊くんを呼んだ。
私はその声を聞いた瞬間、心臓が飛び跳ねるくらいビクリとした。
……だってこの声。
聞き覚えのある、なんてものじゃなくて。
俊くんがゆっくりと振り返る。私もそれに合わせ、後ろを向いた。
そこには、少し前まで私が好きだったひと……瀬戸一汰先輩がいた。
彼は、数人の友達と一緒に信号待ちをしていたようだ。
友達はみんな学校で見たことあるばかりで、先輩と仲のいい3年生の皆さんだ。もれなくみんなイケメンである。
俊くんはあまり驚いた様子もなく、先輩を見つめ返していた。



