教室に戻る途中。
不機嫌そうな顔の桃音ちゃんが前から歩いてきた。
──こういう時は関わらない方がいいわね。
そう思った瞬間。桃音ちゃんが私に話しかけてきた。

「ねぇ。紀知らない?」

あぁ。だから不機嫌だったんだ。
私はさっき図書室で会ったのを思い出したけれど それは言わない事にした。

「知らないよ。」

そう答えると、もっと不機嫌な顔になる。
軽く舌打ちをすると 桃音ちゃんは言う。

「あっそ。じゃあ、見つけたら言ってくれる?」

桃音ちゃんなんかに言うもんか。
心の中でそう思ったけど、声には出さずに

「分かったよ。」

そう答えて、改めて教室へ戻った。