夜1:00。
今の所。紗綾ちゃんに異常はない。
スヤスヤと寝息をたてて眠っている。
さすがに私達も眠くなってきて、私はそばにあったコーヒーをぐいっと飲みほす。

「……何も異常ないわね。」

桃音ちゃんはぽつりと呟く。
私は何も言わず 小さく頷いた。

夜4:30。

「……ん。」

ふと時計を見ると。
夜中の4:32。
私は思わずガバッと体を起こした。
(やばい。寝てた……。)
紗綾ちゃんの方を慌てて見ると まだ何も異常はないみたいだった。
ふと後ろを見ると、桃音ちゃんも眠っていた。
(起こした方がいいかな……。)
どうしようか迷っていると ギシッ。
ベットのきしむ音が聞こえて、思わず振り向く。
そこには さっきまで寝てたはずの紗綾ちゃんが立っていた。

「紗綾ちゃん……?どうしたの?」

問いかけるけど 反応はない。
無言で立っている紗綾ちゃん。
目は虚で、まるで生気がないみたい。
ゆっくりと首を動かし横を向く。
そして、窓の方へ向かって歩き出した。
(もしかして……)

「さ、紗綾ちゃん!そっちはいっちゃだめ!」

必死に声をかけても 紗綾ちゃんはやっぱり反応しない。
怖くなった私は 桃音ちゃんをゆすって大きな声で起こす。

「桃音ちゃん……!紗綾ちゃんの様子がおかしいよ!!」

「……なによ……うるさいわね……。」

まだ眠たそうにしている桃音ちゃん。
いきなり起こされて不機嫌なのか 少し声が低い。
でも、今そんな事どうでもいい。
私は必死に紗綾ちゃんを指さす。

「紗綾ちゃんが飛び降りようとしてる……!」

やっと状況を飲み込んだのか、桃音ちゃんはバッと立ち上がり紗綾ちゃんの元へと走る。
すでに紗綾ちゃんは 窓の鍵をあけていた。

「ちょっと!紗綾!何やってんのよ!」

桃音ちゃんは必死に紗綾ちゃんを部屋の中に戻そうと、腕を引っ張る。
けれど紗綾ちゃんは一切動じず、無表情のまま窓を開ける。

「純恋!あんたも手伝いなさいよ!」

呆然とその状況を見つめていた私を、桃音ちゃんは大きな声で呼ぶ。
我に返った私は 桃音ちゃんと同様。
急いで紗綾ちゃんの腕を引っ張る。
けれど、予想以上に力が強くて びくともしない。

「紗綾ちゃん!!!」

どれだけ呼びかけても やっぱり反応しない。
紗綾ちゃんは足をかけて 窓の端を掴んで、飛び降りる体制に入っている。

「純恋!せーので引っ張るわよ!」

「わ、わかった!」

「「せーの!!」」

二人で声を合わせ引き寄せようとした直後。
ぐんっと腕が引っ張られ、腕を掴んでいた手がほどかれる。
フッと手が軽くなり、2人が尻もちをついた瞬間。
紗綾ちゃんが視界から消えた。

「……紗綾ちゃ……!!!」
「紗綾……!!!」

それと10秒もしないうちに ドシャっ。
鈍い音が響いた。

「紗綾!?」

桃音ちゃんは窓の外へ走り 下を除く。
「ひっ。」小さな悲鳴が聞こえた。
私は桃音ちゃんの肩をさすってあげたかっけれど、それとは裏腹に 私の体はふるえて動かなかった。