あまの邪鬼な暴君






うわ、雨降りそうだなぁ。

どんよりとした灰色の空を、ボーッと眺める。



一応折り畳み傘もあるけど、長い傘も持ってこっかな。



「おい!ブス!」



玄関を出たところで、いっちゃんも丁度同じタイミングだったんだろう。



いつもの暴言、もとい声をかけてきた。



「あ、いっちゃん。おはよう」

「あ、じゃねーだろグズ!」



はあ。ブスとかグズとか。


ほんとは汚い言葉なんだろうけど、いっちゃんが言うと、なんだろう。


不思議と、汚く感じないんだよなぁ。



「慣れ、かなぁ?」

「はあ?なぁにブツブツ言ってんだ?気持ちわりぃ」

「……ああ、それはちょっと傷付いた」




ははっと空笑いして、いっちゃんの隣に並ぶ。

……たまには、いいよね。

だってせっかく会えたんだし。



「いっちゃん、いつもこの時間に駅向かうの?」

「…………」

「いっちゃん?」



正面を向く彼の顔を、チラリと覗き見る。


灰色の曇天の中で、彼のハチミツみたいな金髪は際立っていた。


すっきりした顔立ちも。すべて、私の好きな



「おい」



突然、いっちゃんの顔がこちらに向く。



「うあ、!」



それに私は、慌てて顔を逸らした。



み、見惚れてた。



「てめえ、なんで……」

「な、なに?いっちゃん?」



いっちゃんの不服そうな声が聞こえたので、私は驚いて彼の顔を下から見上げる。



「……チッ、バカが」



いっちゃんはそう言って舌打ちをすると、それから私に端整な顔立ちを近づけた。


前髪にフッと息を吹き掛けられる。



「うわ!!」



え、なに。



「おれ先行く。電車やべーわ」

「あ、うん?」



え。電車………



「って、それ私もやばいじゃん!」



慌てていっちゃんの後を追う。




「は?てめぇなんでついてくんだよ!」




ええ?


なんでって、私といっちゃんってお隣さんだし

最寄りの駅も通う高校も同じだからでしょ!