全員が全員、別々の道を進んで、音楽を続けてるのは俺だけになった。





「いや、でもさ、よく東京行ったよな、お前。俺ぜってー行かねえと思ってた」

「『行かなきゃ殺す』って言ったのアキラじゃん」





「まァ、俺もお前にそんな度胸はないと思ってたぞ」

「うぇっ!ブラウンも!?」





「『リルハの歌じゃなきゃ弾きたくない』って言ってくれたのに!カイトのバカ!裏切り者ォ!」

「…リルハ。水飲もうか」





――続けさせてくれたのは、目の前の「klang」のみんなだ。





「てか、どうなの?『swap attention』。あれ作曲だれ?カイトのほうがまだちっとはマシな曲作れんぜ」





「お前にゃ自信が足りねぇ!もっと堂々としろ!」と、無理やり俺の髪を染めて、ピアスを開けてくれたのは、アキラ。





「枚数出てる以上、負け惜しみにしか聞こえんな。俺は奇抜で悪くないと思ったが」





ケンカ別れ同然に前のバンドを抜けた後、その話を聞きつけてわざわざ学校までやってきて、俺を拾ってくれたのは、ブラウンで。





「あれ、ラスサビ前のコード進行ヘンじゃない?ありえない。『奇抜』っていうより…『ヤケクソ』?アハハ」





俺の作った曲を、ボツも含めて全部歌って、「全部好き」と言ってくれたのは、リルハ。





アキラとブラウンと、リルハ。





誰かひとりでも欠けてたら、俺はきっと今でも「弱っちい泣き虫な界人」のままで。





絶対に「klang」の「kaito」なんかには、なれてなかった。