「……ははっ」






今思い出しても、笑えてくる。界人のドジっぷりと──私のバカッぷりに。





あの時あんなコトを界人に言った手前、すぐに辞めるわけにはいかないよな、と。





界人に再会する前も、その後も、時々このエピソードを思い出しては、私は会社への不満と愚痴を終わりにしていた。




弱っちくて、泣き虫なあの界人がすんなり納得してくれた私のセリフに、責任くらいは持たないと、と。そんな風に思っていた。





けれども、考えてみたら、界人はずっと強かったのだ。中2の引っ越しの時はおろか、少なくとも家出した私を探しに来てくれた小5の時から。今の界人の頑張りの結果を考えれば、それは一目瞭然だった。





私があの時界人になんにも言わなくたって、界人はきっとなんでもまじめに、ひたむきに、そして愚直に取り組んでいたと思う。






「『弱っちくて、泣き虫な界人』、ねぇ…」





結局弱かったのは私で、あのセリフで変えられたのも私。「3年続けよう」と、決意したのも、「言われたとおりだった」と納得したのも、私だ。





──本当に強かったのは界人で、ずっと弱かったのは、私。





「──バカだよ。ホントバカ」





独り言で自らを戒めながら食べるミニパフェは、甘ったるくて、濃厚で。





「げ、ヤバイ。おいしっ」





全ての過ちを、過去の間違いを、その甘さでことごとく包み込み、優しく笑って許してくれそうなくらい。それくらいの美味しさだった。






「ウン、来週からこれも頼もう」






……と、私が脳内定番メニューにミニパフェを追加したところで、






ヴヴッ、という振動音とともに机の上に置いてあった携帯のディスプレイが、新着メッセージを通知した。






「おっ」






携帯を手にとってロックを解除する。






派手なエレキギターがサムネイルの、見知った名前が差出人。






“ごめん美和!11時には着くと思う!”





11時ね。はいはい。






11時って。





「閉店じゃねーかバカ界人!」





……私の唐突な大声が寂れた店内に響き渡り、斜向かいでいちゃつくカップルがぎょっとしてこちらを振り向いた。