「ほほう、ワシが言う前にワシの言いたいことを理解するとは、ロバート、さすがじゃの」
「お褒めにあずかり光栄デス。ツマリ、このタカミ商事の後継者を、このお嬢さんに選ばせよう、ということでしょう?」
「えっ?!」
「えっ?!!!」
「……え?」

おどろくトシユキ、タイガ、それにヒナの前で、惣右介はロバートの言葉を承認するかのように深く一度うなずいた。

「おじいちゃん、どういうこと?」
「トシユキさん、あなた、会長の孫のくせにまだわからないのデスか?」
「わからなくて悪かったですね」

トシユキが、むっとした顔になる。

「ロバートさん、それではあなたはもうわかっているということですよね? 会長のおっしゃりたいことが、なにもかも」

タイガが冷静をよそおって――しかし結局は怒りをおさえきれないらしく、嫌味ったらしい口調でそう尋ねる。
ロバートは、余裕しゃくしゃくに返した。

「ええ、もちろんデス。惣右介会長の孫である高見沢トシユキくん、会社の屋台骨となる新事業を次々に成功させている兼森タイガさん、それに会社経営に通じたこの私、ロバート・ストーン……ここへ呼ばれたのは、次期経営トップの内々の指名にあるというのは、顔を合わせたすぐのときカラ分かっていまシタ」

ロバートはそう言って、細い眼鏡の下の薄いブルーの瞳を動かし、あざ笑うようにトシユキとタイガをちらりと一瞥する。

「わからなかったのはこのお嬢さんデス。しかし、今の会話を聞いて納得しまシタ。どういう関係だかは知りまセンが、惣右介会長はこのお嬢さんをえらく見こんでおられる。このお嬢さんが夫として選んだ男に、タカミ商事のあとを継がせよう、と、そういうことデショウ?」

ロバートが、惣右介に目を戻す。惣右介はかすり模様着流しの袖につっこんでいた両手を出した。

「その通りじゃ。期限は3ヶ月。3ヶ月の間に、ヒナちゃんが選んだ男こそが、ワシの跡をつぐべき男よ」

「3ヶ月……まあ、妥当な期間ですネ」

ロバートがうなずく。
いっぽう。

「おじいちゃん、そんな無茶な……」
「会長、冗談はやめてください!」

トシユキとタイガは、惣右介の言葉に難色を示した。