ルーン記

アテナ視点

(見事にはぐれたわね……。きっと妹達もなんだろうけれど)
と、心の中で思いながら私は一つの豪邸で一休みをしていた。
「アテナ…？」
「ごめんなさい。家族の事が気になって気になって……」
「そうだよな……」
と、私の隣に座る彼は私を助けてくれた人。名前は『レイル・ラント・ライガ』。元々は魔物の王者だったと言われているらしい。でも、今はこの国を守る王の下の一家らしい。私達でいう大臣とかそういうのらしい。
「……アテナって何処から来たんだ？」
「信じてはくれないだろうけど、私達は月の世界の王族」
「月の世界っ！？あの、夜になったら現れるあの？」
「ええ。月の世界には朝という概念が存在していないし、人間という者もいない。でも、人間に似た者……天使がいるわ」
「天使…かぁ」
「でも、人間の考える天使ではないの」
「え……どういう事？」
「人間が考える天使はいつも気楽そうで楽しそうというポジティブな考えじゃないかしら？」
「そうだなぁ。空も飛べてさ」
「でも、それだけじゃない。特別な天使では無い限り言葉も発すること無く感情も無い。そんな天使達はずっと月の街をうろつくだけ」
「なんか…かわいそうだな」
「私達は見慣れてわからないのだけれど。そして、特別な天使は城に使える騎士になるの」
「……そうなんだ」
「私達には死というものが無くてある段階に来てしまえば歳を…いいえ、老けることもなくなる。不老不死というところかしら……」
「死なないのか…？」
「完全って訳でもなくて、能力を使う事により死に近づく者もいるわ。それに能力同士の戦いでそれぞれの能力にもよるけれど、戦いに有利な能力を持った者が力を使い相手を殺すことも出来るわ」
「そうなのか……」
「ええ。ここまで話したけれど信じてくれるかしら？」
「ああ。アテナの事だ……誰も信じなくとも俺は信じる」
「ありがとう…」
「……なあ」
「何かしら？」
「家族が見つかるまで……ここにいてくれ。…俺もこの権力を持って探すから…さ」
「……」
(私には行き場所がない。これを断れば私はどこに行けばいいかわからなくなる……。ごめんなさい。イリア、ミリア、お母様、サリシア……そし)
「うん……私は行き場がないし、あなたがいいのなら……」
(この人の裏を知っても…私は……頑張るよ)
「レイル……私、まだ私のこと全てを言ってないわ」
「これから……全部聞いていくから今は」
と、言って私をベッドの上に倒した。