「おーい、皆ー。今日からしばらくここで世話になる家族が来たぞー」
「…」
私は何故か緊張していた。これは、人という存在とあまり接していなかったからだと思う。
「名前は、ミリアだ。皆仲良くする様に!」
「はーい」
幼い子もいるせいか、様々な声のトーンがあった。
「ミリアこっちにおいで」
「う、うん」
「俺の弟を紹介しよう」
と、目の前に現れたのは無表情の青年だった。
「アイトレン・ジュカイント。結構歳の差があるが、俺の弟だ」
「よろしく」
(なんか、普通じゃない。もっと…こう。明るいのが人間だと思ってたのに。大した私達と変わらないんだ)
「よろしくね。アイトレン!」
「アイトでいい。……ん」
「どうしたの?」
「ミリア…だったよな……。見覚えのある顔だ」
(え!?私地球に来たの初めてだし!そんなのあるわけない!)
「そんなわけないよ!だって、私はアイトと初めて会ったんだよ!?」
「そう…だよな。すまない。だが、一つと言わんが質問をしたい」
「え?」
「スレーア部屋借りるぞ」
「お、おう」
「こい」
「うん……」
(何聞かれるんだろう……まさか月の世界の事じゃっ!?でも、人間は知らない筈だし……)
「入れ」
「は、はい」
私は思いのほか声が裏返った。私が部屋に入るとドアを閉め、鍵をかけた。
「で、早速質問なんだが……」
「…」
「月から舞い降りた人……月人はわかるか?」
「ふぇっ……」
(えっ!?ちょっと、この現状を考えると、それは私の事じゃん!どう答えたら良いんだろう……)
「知ってるんだな…」
「(ギクッ)」
「じゃあ、次。それは、ミリア…お前か?」
「え……。ど、どどどうしてそう思うの?」
「答えれば教えてやる」
「……」
「はあ……。人間は月の世界の事を知る筈がない。悟られないように、月面からも隠れている場所……そんな事も俺は知っている。知っていて当然……かな」
アイトは、不敵な笑みをこぼしながら言った。
「……アイトは一体何者なの?」
「月人。そして、お前の……いや、何でもない」
と、言い私から視線を外した。
「月人……って。ええ!?嘘っ!?」
「声が出けーよ。だが、本当だ。」
「じゃあ…スレーアも?」
「スレーアは違う。あいつは勝手に俺が弟だと刷り込んだだけだ。」
「そうなんだ。」
「俺からの話は終わりだ。決して誰にも言うな。スレーアにもな。」
「う、うん。分かった。」
と私が言うとアイトは鍵を開け私を部屋の外に出した。
(…月人が……。)