(真っ暗だ。どうして真っ暗なんだ。そして、僕は姿があるのだ?感触というのがわかる…自分自身を手が触っている。僕が触ろうと思ったら……生き物ってこういう仕組みなのか?…僕自信丸くなっているようだ。動けない。どれだけ小さな場所にいるのやら検討がつかない。そして、声も聞こえない。あの世界とは違う場所なんだな。そして、声が出せない。この小さな世界は僕の体を丸めさせ、声を出させない不思議な所だ。だが、水なのかわからないが体が浮いていて、丸いままでも、回転くらいはできる。僕の心臓の鼓動が聞こえる。生きているとはこの事なのか。姿がなかった僕に命が?)
「…ん…と……に」
(微かに声が聞こえた。僕をこの真っ暗な所から出してくれ。って言ったって話せないんだ…通じる訳ないよね。何人いるんだろう?2,3人はいるみたいだけど)
「繭か?」
「にしてもこんな大きな繭か?」
「有り得ないだろ」
「何が産まれてくるんだ?」
「黒い繭だ…。我々と同じ種類だろう……」
「同じと言ったってよ、ルズの兄さん……」
「同じと言ったまで、姿は我々に似ているとは言っていない。ただ単に、ロストの生物になる…という事だ。わかったか?セートス」
(ロスト?この世界の名前だろうか?)
「そろそろ街へ戻るぞ」
「了解っす」
「わかりました」
(帰ってしまうのか!?出せ!ここから出せ!)
足音が遠くなっていくのを僕はいつまでも聞いた。そして、しばらく経つと無音の世界に逆戻りしてしまった。
(僕は、この小さな繭からいつ…)
僕には不安が残った。そして、眠りについてしまった。