RE. sEcrEt lovEr

「…イヤ」

…もしかして自惚れていた?
目の前の人気No.1ドクターは一瞬ポカンとした顔をする。

「甲ちゃんがいなくても、貴もママ達もいるんだよ?

それに入院してた分も高校生らしい青春送らなきゃいけなくて、忙しいの」

大丈夫なんかじゃない… 大丈夫なわけあるか!

あれだけ惚れさせといて。

震える声で答えると、彼がふっと笑うのが聞こえた気がした。

そして顔を上げた次の瞬間、不意に肩を抱かれ耳元で囁かれる。

「……… 」

「…っ!」

思考がまとまらない内に、額に口づけを落とされた恋愛素人はその場で硬直してしまった。

「売却済みってことで」

「!?」

「じゃあ、行くねー。ちゃんと病室で大人しくしとけよ?」

患者を無理矢理外に連れ出した医者がよく言うよ?

それに、キス?!

熱を帯びた額に手を当てるとふわふわとした感情は夢じゃなかったと確信に代わり、顔も更に熱くなる。

ちゃんとした見送りができないまま、ぼんやり中庭を歩いていると、

椎名先生に捕まり傷を処置しに連れて行かれて… そこからの記憶がない。

あのマーキングの破壊力が強すぎて、どうやって病室まで戻ったか記憶が曖昧なのだ。

全く、とんでもない置き土産をしてくれたもんだ。