RE. sEcrEt lovEr

「え?絹、どうした?それ」

ベンチに腰かける彼の姿が見える頃には膝の部分も赤く染まり、痛みも増してきた。

「…間に合ったよ!途中こけたけど、来れたよ」

「とりあえず診察室に」

「甲ちゃん、大事な話って何?!」

今にも泣き出しそうな気持ちを強気な口調でかき消す。

それに対して甲ちゃんはヤレヤレと言いたげな顔をする。

「…夕方の便で発つことになった」

「え…?」

改めて言われると、胸がかきむしられる思いで 頭が真っ白になる。

甲ちゃんはそんなあたしを横に座るよう促す。

「絹が歩けるまで回復した姿が見れて良かったよ。半ば強引だったけど」

本当にね。まさか最後にこんなにも歩かされるとは思わなかった…

「何で今まで話してくれなかったの?もしかしてあのポスターが原因なの?!」

「落ち着けって」

「落ち着けないよ!!いきなりそんなこと…」

納得できるわけがない。

それがもし、あたしのせいで… あたしが知らない所でマスコミとかに追いやられていたとしたのなら。

甲ちゃんのお医者さんとしての道が絶たれたとしたのなら。

「絹」

名前を呼ばれ、思わず肩を竦めてしまう。

「…オペの前にさ、小さい頃から好きだったって言ってくれたよな。麻酔中だったけど、覚えてる?」

その話!?

「うん… 」

…忘れたくても忘れられませんよ。