RE. sEcrEt lovEr

足が進まない。階段の前の梁の後ろで必死に息を殺す。

「いつになるか分からないけど、考えとくよ」

甲ちゃんはそれだけ言うと、看護師さんとは逆の方向に歩いていった。

何、今の…?

心の準備ができたらねってこと?

しかも こんな場所で告白?

他の人が大勢いる前で、しかも手術室で告白をしてしまった自分を棚に上げ、

どこからか溢れてくる妬みや焦りを悶々と抱えたまま、病室に戻ると すぐさま布団に潜り込んだ。

そして暫くすると、それはゆっくりと剥がされる。

「息できなくなりますよ?」

ニヤリと笑った甲ちゃんがそこにいた。

白衣はやっぱり着てない。

「“先生”はお休みですか?」

距離を置くようにわざと敬語を使う。

「うん、まぁ… ね」

「… 辞めちゃうんでしょ?」

はっきりしない返事に苛立ちが増してしまい、ついフライングしてしまう。

「知ってたんだ。椎名先生?」

焦った素振りも見せない甲ちゃんの口ぶりに急に現実を突きつけられた気がした。