RE. sEcrEt lovEr

それはリハビリついでにママと院内のカフェに行った帰りだった。

なんでも有名ホテル監修らしくて、大学病院と言えどリッチな気分を味わうことができる。

もっとも食事制限のあるあたしは紅茶のみだけど。

ママと別れた後、病室に向かって歩いていくと

「もう明日から頑張れない~」

「ねー?この寂しさはどこにぶつければいいんだっつーの」

白衣にエプロンをつけた看護学生さんがエレベーターを待ちながら話しているのがふと目に入った。

仕事柄、カラーリングもせずにぎゅっと一つにまとめただけのお団子頭、手にはたくさんの書類。

院内ではキビキビ動き回る彼女達も、一歩病院の外に出れば自分とは さほど年もかわらない女の子なわけで、

恋バナや先輩や仕事の愚痴も溢すんだなと新鮮だけれど親近感がわいてしまう。

そう勝手に思っていた時だった。

「日向先生、辞めちゃうなんて実習に来た意味なくない?」

“日向先生”拝みに来るための実習かい!なんて矛盾を指摘するよりも

“辞めちゃう”のフレーズが引っ掛かり、気がつくと乗るはずだったエレベーターを見送り、ただ呆然と立ちつくしていた。