「縫ってある所、洗浄するねー」

いちいち実況中継いりません…

思わずぎゅっと歯を噛みしめる。

すると冷たい何かが傷口に触れた。

やっぱり痛いじゃんと憎まれ口を叩くあたしに、彼は穏やかな口調で切り出す。

「…絹。貴来たら、お散歩でもしておいで?」

「いいの?」

思いがけない提案に急に胸が弾む。

外の空気を吸うのも久しぶりだ。

「うん、但し今度は自分の足でね」

「…え?」

分かっているけれど、何だか怖い。

もう悪いところはないはずなのに、ほんの少しの衝撃が命取りになっちゃいそうで。

「よし、おわり」

「甲ちゃんは きょ、今日」

仕事が終わってからリハビリに付き合ってくれる?

勇気をふるってそう言いかけたその時、ドアをノックされる音がした。

「き~ぬ~!」

学校でも仲のいい友人が数人 顔を覗かせる。

「あ、ぉ取り込み ちゅう デシタ?」

処置の最中ということに気がついてそう尋ねる友人に、甲ちゃんが代わりに答える。

「大丈夫だよ。退屈してるから相手してあげて」

「「ハイ…」」

その瞬間、女子達のハートが射止められのが恋愛経験値の低いあたしでも分かった。