貴の帰宅後、一人になった病室で白い天井を仰ぎながらぼんやり考えを巡らす。



「お前のカルテ見た日かな、あの人すげー苛立っててさ。

なんでも元カノってゆーの?はっきり言わねーけど、

その人もお前と一緒で心臓が悪かったらしいんだ。

恒兄の約束は守らなきゃいけないけど、彼女のこともあったから葛藤っつーか… やけ酒」

「彼女さんって、今はどうしてるの…?」

「… もう いないらしい」



貴との会話が延々と頭の中でリフレインされる。

あたし、甲ちゃんに辛い記憶を蘇らせていただけなの?

“大切な人”じゃなくて、あたしが生き延びてよかったの…?

一人の時は、余計にマイナスな考えに支配される。

ママがそれは夜の仕業よ、なんてよく言ってたっけ。

そんな時こそ思い切り寝ちゃえば、朝は気持ちに余裕が出来ているはずだからって。

だけど今夜は眠ることさえ、許されないみたい。

襲い来る不安感と息苦しさとひたすら戦っていた。