「きーぬーかちゃん」

「イヤ、無理無理無理!」

あの手術の後、甲ちゃんは何事もなかったかのように“お医者さん”をしていた。

それはあの日の告白なんてまるでなかったかのような、

麻酔で錯覚してたと思わせるような そんな味気のない塩対応ってヤツ…

あたしはと言うと今日は絶賛反抗期真っ只中。

それはけして鈍感な彼に腹を立てているのではなくて…

「見なくていいから傷口だけきれいにしよ?」

「染みない?」

「染みない… ように努力はするけど」

「昨日 染みたもん、悶絶だったもん!」

ある意味、小児科の問題児。

そしてそれでも屈しないのが甲ちゃんなわけで。

「感染症引き起こして、退院遅くなっても知らないよ?」

それは困る…

でも明るい場所で意識のある時に甲ちゃんに胸を診られることにも

未だに慣れないし(手術受けたのに)、何より消毒が痛いのだ。

「もしくは研修医ちゃんの練習台になるけど、それでもいい?」

…ズルイ。

渋々 上のボタンを手探りで外していく。

傷口を見ないようにゆっくり慎重に…

甲ちゃんはやれやれな顔をしながら手にグローブを付けて準備する。