RE. sEcrEt lovEr

ズキン

その時だった。心臓が飛び跳ねたような感覚。

酸素が薄いような、息がしにくいような…

よりによって何でこのタイミング?と手をそっと添える。

「ん?どうした?」

「何でも ない…」

はずだった。

手術も終わったのに、まだ胸が痛いだなんて心配かけるわけにはいかない。

「そろそろ部屋に戻ろう?」

「でも お仕事…」

「休憩中だからいいよ。そっちにも顔出そうと思ってたとこだし」

恐らく彼の仮眠及び休憩も兼ねての強制送還…

椎名先生に見送られ、また歩いてきた道を戻る。

「歩くの辛くない?」

「うん」

ゆっくり歩幅を合わせてくれる。

近くにいるのに、すごく遠い存在に感じるのはここが家じゃないから。

“甲ちゃん”じゃなくて“先生”だから。

それが誇らしくも、やはり寂しく思うのはあたしの身勝手な言い分に過ぎないのだろう。