昔、あるところに小さな村がありました。みんな、幸せに暮らしていました。それには、理由がありました。

村の村長が、魔法使いだったからです。村長は、杖を片手に、いつもマントを風に靡かせていました。村の人が奇病にかかったり、自然災害で村が損壊したら、いつも魔法で、なおしてくれました。


しかし、ある時、村長自身が奇病になってしまい身動きがとれず、そのまま亡くなってしまいました。村の人達は立派な御葬式をして、村長の杖とマントを村の公民館に大切に保管しました。



時が過ぎました。村に疫病が流行り、農作物も中々、実らない年が何年か続きました。

村の外れに一軒家がありました。義郎という農夫が男手ひとつで娘を育ていました。

娘は、さーちゃんといいました。ある時、さーちゃんが学校から帰ってくると、義郎は布団で寝込んでいました。

義郎は、疫病にかかってしまったのです。さーちゃんは、学校を休んで看病しましたが、なかなか状態は良くなりませんでした。


さーちゃんは、村人の中でも博識の老婆に義郎を診てもらいました。

老婆
「これは、もう危険な症状が出ている。魔法で治すしかないね」

さーちゃん
「魔法?
でも、村で唯一、魔法を使える長老は既に亡くなっているわ」

老婆
「長老に息子がいるさ。その息子なら魔法を使えるかもしれない……」

さーちゃんは、急いで息子の家に行きました。