「お疲れ様でした。これ、万年筆です」
ウサギは柏木冬馬の前に行き、本物の万年筆を手渡しした。
「ありがとうございました」
さて、問題はここからだ。
乱魔はまた柏木冬馬のものを盗みにくるかどうか。
もう諦めてしまうのか。
そもそも、どうして乱魔は柏木冬馬のものを狙い続けたのだ?
「お前、乱魔になにか恨みを買うようなことをしたのか?」
突然こんなことを聞かれ、柏木冬馬は戸惑いを見せた。
「いえ……」
そして若干不思議そうに答えた。
「ならば、乱魔は聞き覚えあるか?最近ではなく、15年くらい前だ」
「ありますけど……」
「どこで聞いた?」
「昔、乱魔は暴走族でした。僕、その一員だったので、聞くもなにも……」
繋がりが、見えた。
「成瀬優弥は知っているか?」
あたしは引き続き柏木冬馬に質問をする。
「当たり前ですよ。総長だったんですから。それに、僕は総長の右腕。知らないなんて言えません」
柏木冬馬は昔を懐かしむような瞳で言った。
「なら、なぜ暴走族が怪盗になった?」
「わかりません……総長が乱魔の人間に殺されてから乱魔は自然壊滅したはずなんですけど……」
「わかった。今日はもう遅いから、この話はまた後日聞く」
あたしたちは軽くあいさつをして、柏木冬馬の家を出た。
「ちぃちゃん、なにかわかったんでしょ?」
ドアがきちんと閉まり、ウサギが聞いてきた。
ウサギの勘はいつも鋭い。
誤魔化せないな。