「もちろんです」
ウサギが仕事モードに入った。
表情がさっきまでの頼りないウサギとはまったく違う。
「そうか」
社長は扉のほうを向いて、鍵を開けた。
「えっ……?」
社長は信じられないというような顔をしていた。
まあ、そうなるよな。
部屋に入ったのがウサギではなく、あたしなのだから。
「ここに入るのは、ラビットさんですよね?」
「そうですよ」
ウサギが微笑みながら受け答える。
「この子が……ラビット……?」
やはり信じられないらしい。
「そうだ。あたしがラビットだ」
次はあたしが答える。
「…………」
社長は黙り込む。
「やめだ!」
かと思えば、いきなりそう怒鳴った。
「ガキがやるとは聞いていない!こんな奴にうちの宝を任せられるか!」
これだから金持ちの人間は嫌いなんだ。
簡単に手のひらを返す。
こんな人間のためにわざわざ警備をするのもバカバカしい。
「ど、どうしてですか。ラビットの頼みは断れないって……」
ウサギは社長の態度が急変したことに驚きが隠せないようだ。
「それはラビットが君だと思ったからだ!それが……こんな子供とはな!こっちはお遊びじゃないんだ」
「それはあたしも同じなんだがな」
「はぁ?」
「あたしだって、遊びでこんなところに来ているわけではない。乱魔を捕まえるために来たんだ。なにより、お前は乱魔のこと、なにも知らないではないか」