乱魔も無茶するもんだな。
セキュリティが日本一の家にある宝を狙うとは。
さらに警備が加わると捕まる可能性だって高まるのに。
いや、財閥はプライドが高い人間が多い。
そう簡単に警察を受け入れるとは思えない。
もしかして、これを狙ったのか?
警察が受け入れてもらえなかったら、実質乱魔とそのセキュリティのとの勝負となる。
つまらないな。
なんとしてでも協力してもらわなければ、これでは乱魔の思惑通りになってしまう。
「ウサギ」
あたしは隣に座っているウサギを呼んだ。
「ん?なに、ちぃちゃん」
「予告状の謎は解けた」
「え!?」
ウサギの声はあまりにも大きく、その場の視線があたしたちに集中する。
「ホントに解けたの!?」
「ああ」
「え、え、いつ?乱魔、なにを盗もうとしてるの?」
これがあたしの相棒と考えると、不思議でならない。
もう少し落ち着いてほしい。
「知由。私たちにも説明してもらえるか?」
いつの間にかあたしたちの近くに来ていたウサギの父親、正広(まさひろ)。
あたしは座って、向こうは立っているから、見下ろされる形なんだが、なんとも迫力がある。
「乱魔は明日の夜10時に星野財閥にあるネックレスを盗もうとしている」
あたしは説明をざっと省略し、必要事項だけを伝えた。
「知由……」
「ちぃちゃんって説明、下手だよね」
……親子そろって同じような顔をするでない。
あたしが説明下手だということくらい、ちゃんと自覚している。
「まあ、いい。奴は本当に星野財閥にあるネックレスを盗もうとしているのだな?」
「ああ、間違いない」
そう答えると、正広はどこかに行ってしまった。
「ちぃちゃん、僕はどうすればいい?」
「ウサギはもうなにもしなくていい」
嘘は言っていないが、少々言い方が悪かったか。
「えぇぇ!?」
案の定、ウサギは驚きの声をあげた。
「どうして!?」
「あたしが乱魔に正体をバラすからだ」
「理由になってない!」
いや、充分な理由であろう。