これを『運命の恋』と呼ばないで!

「なつみ……」


平和そうな顔をしてるヤツを見ると安心する。
こいつと俺が事故に遭うなんて、どこからそんな間違いが起きたんだ。



(これも鹿のせいか?)



機内で聞いた若山の悪夢を思い出した。
あり得ない話だと切り捨て、丸い目をした女の髪を掻き上げた。


「俺達が墜落した飛行機に乗ってると誤報が流れたそうだ。幸いにも今は、生存の可能性ありと報道され直したらしいけど」


若山が病院で話をした男性が、俺達のことを捜査当局に連絡してくれたのだと知るのはもう少し先。
とにかく今は、実家に連絡をしてみないと。


「お前の実家に生きてると連絡しよう。それから俺の実家にもかける。早くしないと皆がぶっ倒れちゃいけねぇからな」


若山は焦って電話をした。
こんなに時ばかりケータイを壊すなんて、どこまで要領の悪い女なんだ。


(まぁ今回は、なつみだけを責められねぇけど……)


俺が回復した時点で若山は連絡しておきたいと言ったんだ。
それを敢えて止めて、ここまで不安を引っ張ったのは俺だった。




『お母さん、私達なら元気だから安心して』


涙ぐみながら電話に出た母親を励ましてる。
こいつのこういう一生懸命なところが俺は好きなんだよ。



(真っ直ぐで可愛くて堪らねぇよな)


微笑ましく思いながら近寄った。


「代わるよ」


ケータイを受け取って事情を説明した。
若山の両親は心から安堵して、無事にシンガポールへ向かって欲しいと懇願した。


『今度は出発前と到着後には必ず連絡をします』


約束をして通話を切ると同時に、社長から電話が入った。