「起きてよっ!!先輩っっ!!」



声を限りに叫んだ。


ハッとして瞼を開くと、目の前には切れ長の眼差しをした人がいてーーーー




「……なつみ?」



目を開いたまま声をかけられた。




「私………」



何が起きたの……。


ここは何処なの………。




「なつみ?大丈夫か?」


先輩の声がする。

目の前にいる人は、確かに青空奏汰みたいに見える。


けれど………





「イテテッ!!何するんだ!!」



ギュッと摘んだ頬っぺたを庇って、先輩が痛そうに片目を閉じた。



「本物?夢じゃないの?」


自分の頬も抓ってみる。

微かな痛みしか感じなかったのは、指で挟んだ瞬間、先輩が手を離したからだ。


「やめろ!バカ!」


握られた手を持つ人の体温を感じる。

あれ程冷たかった筈なのに、今はちっとも冷たくもない。



「お客様?大丈夫ですか?」


オレンジカラーの制服を着たキャビンアテンダントに声をかけられた。


「すみません、お騒がせ致しました。どうやら悪い夢を見てたらしくて、寝呆けて叫んでしまったそうです。もう目が覚めましたから大丈夫。周りの皆さんもご迷惑をかけて申し訳ありません」


立ち上がった先輩は頭を下げ、直ぐに座り直した。

気分はまだ悪いらしく、口元を手で隠している。



「私………」


まだ現実じゃない気がする。

これも全部夢で、また違う世界が広がるんじゃないだろうか。