山道を我が物顔で運転する愚かな人間に対する復讐。

その矛先が自分に向けられているとは知らずに今日まで来てしまった。



『ごめんなさい……それは謝ります。ぶつかった場所へ戻りもしないで、その後も二度と行かないでごめんなさい!

死んでるなんて思わなかったの。あなたに家族がいるなんて思わなかったの。

どうか許して!わたしに復讐するのはやめて……!』



懇願する。

どうか、この罪を許して欲しいーーー!



『オレが復讐するのはお前だが、地獄に送り込むのはお前ではない。お前の最愛の相手こそが一番の報復に繋がる。だから、そこに眠り込んでるその男を連れて逝く!』



マントに隠されていた蹄が先輩を指差す。

真っ白になった先輩の体が固まり、手も足も凍りついてる様だ。



『イヤぁぁぁ!』


体を背に庇った。
けれど、悪魔の格好をした雄鹿は容赦なく、先輩の体を浮かび上がらせてしまう。


『愛する者を失う悲しみを思い知れ。お前はもう二度と、この男には会えないんだーーー』



背中に担いで歩き去ろうとする。

その後ろを追いかけようとするのに、足はどうしても前に進まない。




『待って……!!』


手を伸ばしたいのに、まるで金縛りにあってるかの様に動かない。



『先輩……!!』



お願い……


目覚めて、先輩………



お願い…………