24世紀が終わろうとしていた12月半ば。
あの時には既に、地球温暖化によって引き起こされた海面上昇で地球の陸地の75%は消滅していたように思う。かろうじて残っている陸地は当然標高の高い山ばかりだったが、生き残った人々のために開拓されていて本来あった緑は無くなっていた。私達の街はそんな山の中腹にあって、次に大雨がくれば沈んでしまうだろうと言われていたし、覚悟も準備も出来ていたはずだ。それでもその時がやってきてしまうと、それはとてつもないスピードで、私達の街をいともたやすく消してしまった。

最初に世界のどこだったか、一つの街が海没して約300年。自然は猛威をふるい続け、生き残った人類も命のカウントダウンを始めていたに違いない。
これは私達に与えられた罰だ。
それから人口は激減した。
残された人類が進化を始めたのは、22世紀頃だっただろうか。
特異体質者と呼ばれる人々が現れ始めた。22世紀の世界に、それらは役に立たなかったらしいけれど。というよりもこの頃の人類にとっては少ない土地を求める戦争の手段にしかならなかったらしい。そうして地球の人口が1億人を切り始めたのは24世紀中頃。この進化の結果ともいえる特異体質者を、人々はようやく人類の存続のために利用するようになっていた。
特異体質の割合は徐々に増え始め、現在25世紀。
特異体質を持つ人間は人口の八割以上を占め、人々はそれぞれになんとかその体質を利用して生き延びていると言っていい。
24世紀末にはついに島と島を繋ぐ超高道路が完成し、島が水没すれば次の島へ移り住むことが出来るようになった。
もちろん、そんなのはただのいたちごっこだ。
けれど、そうやって生きることだけが地球に残された人類の運命だった。