溺れる恋は藁をも掴む

 惨めな気持ちで家に帰り、声を殺して泣いた。

 『自分の身体が醜いから‥‥
誠治さんは最後まで私を抱けないんだ』
そう思うと、悔しくて、惨めな気持ちになり、どんどんマイナスのオーラに包まれ、堕ちるとこまで堕ちでしまう。



 恋愛偏差値の低い私は、その恋に縋ってしまった。

 バカみたいに、本心を隠したメールなんかを送ったりもした。



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家に無事に着きました。
水族園楽しかったな……
有難う御座います!

明日から仕事ですが、年末までやりきりましょうね(^^)

クリスマス楽しみにしてます(≧∇≦)

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 顔文字が滑稽に見えた。
ただ、誠治さんを失いたくないだけで、本心なんてそこにはない。

 形を無理に修正しょうとする、心がこもってないメール。

 うまくいかない、行き場のない恋心。

 一層、嫌いになれたら楽だった。

 誠治さんに踏ん切りつけられる強い女だったら、どんなに楽になれただろう……


 セックスが上手くいかないくらいで、嫌いになんてなれない。

 そんなちっぽけな事くらい、乗り切れると自分に言い聞かせた。

 セックスがなくても上手くやってゆけると願った。


 恋している自分に溺れてんだ。
藁を掴む気持ちで縋りたいだけなんだ。



 恋を失いたくない弱虫が、現実に目を背けた、理想論なのかもしれない…


 恋は一人でも出来る。
見返りを求めないなら。

 恋人達は、互いの気持ちがすれ違えば、波打ち際の砂の城に過ぎないのかもしれない。



 砂の城をどんなに固めようとしてもーー
打ち寄せてくる波は、容赦なく崩していくのだからーー