溺れる恋は藁をも掴む

 ーー暫くの沈黙が続いた後ーー

 「ごめんね。華ちゃん。
服に着替えて飲み直そうか?」

悲しげな声であなたは言った。

 悪い事はしてないはずなのに、何とも言えない重苦しい雰囲気になる。

 裸の私は置いてけぼり……

 情けない気持ちやバカにされたような気持ちも交じり、涙が溢れそうになるのを必死で堪えながら服に着替えた。



 もう、終電も出てしまった時刻。
 ーー帰るに帰れないーー

 唇を噛み締める。

 「私の方こそ、ごめん‥‥なさい……」

 悪い事なんてしてない。
でも、謝るしか出来ない…


 うまくいかないね。

 誠治さんは、そんな私を見て、焦った顔になった。

 取り繕うように、私を抱きしめる。


 「ムードに任せて急いでしまったけど…
緊張しすぎて、ムード壊しちゃったね……

 華ちゃんは悪くない!
 俺が悪いだ。
 ……本当にごめんなさい……」


 誠治さんの腕の中にいるのに、私は寂しくなる一方だった。

 それでも……

 バカな私は、誠治さんを失いたくなかった。

 セックスが上手くいかないだけで、嫌いにはなれない。

 薄々、ダメかな……と予想がついちゃう恋愛にもすがりついてしまう。

 バカでしょ……
バカなんだよね……





 ぎこちなくなって、一睡も出来ないまま、寝たふりをして、会話を避け、重い空気に包まれながら一晩過ごした。


 朝になって、何もなかったように振る舞ってはみたが………

 お互いに気まづい雰囲気に堪えられなくなっていた。



 寂しい気持ちを抱えたまま、私は家に帰った。