優しくベッドに誘われて、あるがままに身を任せたい夜もある。

 あなたの匂いが残るベッドに押し倒され、唇を重ねながら、恋人の階段をゆっくりゆっくり歩んでゆきたい。

 ーー結ばれたい、身も心もーー

 目を閉じて、そう願った。

 電気を消した部屋、手探りの世界で、あなたの体温を感じ、愛の証を一つ一つ受け取り、女になってゆく…

 女が身を任せる時、男の背中に手を添えるのは、『あなたを受け入れます』の無言のサイン……


 なのに………なのに……………



 あなたは私の身体から、そっと離れた。


 「………ごめん………」

 ごめん……
次の言葉を考えているのは、この薄暗いシルエットの中でもよく見える。


 私の頬に涙が流れている。
止めたくても止まらない……


 抱かれながら気づいていてしまった。

 ーーあなたの心がココにないという、悲しい現実をーー

 それでも、しがみつきたくて、手を伸ばして、必死に背中を抱いていた。