溺れる恋は藁をも掴む

 これから起きる事を考えたら、緊張感が増してくる……

 やや引きつる笑顔。


 「座ろうか?」

 隣り合わせにソファに腰掛ける。

 「何か飲む?」

 「誠治さんは?」

 「軽く飲もうかな?」

 「じゃあ、私も」

 備え付けの冷蔵庫から、缶ビールを二本取り出し、グラスに注いで飲み始めた。

 ゴクゴクと喉を通過する苦味の効いたビール。

 この緊張をほぐす為に注がれてゆく……


 目の前にはダブルベッドがあり、エッチな妄想を掻き立てた。


 ーー女って不思議だーー

 こういう事になるなんて想定内で、デートの時に下着を気にする。

 いざという時を、本能で察知する能力が備わっているのかもしれない…………?

 それでも……セックスしたくてここに来たのはずなのに裸になるのが怖い……

 大好きな誠治さんに、私の身体を晒すのは………もう、時間の問題。

 昼間、観た映画の女優のような、くびれがあってスレンダーな裸とは、天地の差がある。

 人前で脱げるのは、スタイルがいいからよね……

 女優だから当たり前か……

 あんな裸なら、躊躇なしでセックスに挑めるのだろうに‥‥

 女優の裸と自分を比べて卑屈になっても、仕方ない……

 私は平凡なOLであり、おデブな女の三浦華。

 それを承知で、ここに来たんだから、誠治さんだって分かってくれてるはず………

 『がっかりしないでね』

 それだけを願った。