溺れる恋は藁をも掴む

 「俺と華ちゃんは、ある意味似てる……
人を気にし過ぎて不器用な生き方を自分で選んでしまうとこ。

 でも、華ちゃんはさ、気に入らない事は気に入らないと、ちゃんと言える。
 ーーそういうとこ羨ましいと思うよ!」


 「誠治さん……
自分を守る武器って脆いんですよ。
自分で守るから脆い。

 だから、誰かに優しくされると、嬉しい反面、素直な気持ちがはっきり出せなくなる……

 自分で性格ブスにしていくのって、簡単なんです。

 ーー虚しいけど、変えられずに苦しみます。
それに醜いです。

 分かっているのに、そんな武器が備わってしまった……」

 「素直に甘えらんないんだね?」

 「甘える術を知らないから……」

 「甘えてみる?
俺で良かったら」

 「………甘えていいんですか?」

 「俺も不器用だからね、上手く出来るか分からない」

 「上手く甘えらんないかもしれないです。
私は世界一不器用なんですから………
 ーーでも、誠治さんに甘えたいですーー」


 目と目が合った。
一線を越えようとする、男と女の無言の合図。



 お酒の勢いですか?
さっき観た官能映画に感化されたからですか?



 ーー加速しますーー

 男と女は、急速に盛り上げる雰囲気に酔いたいもんだから……