溺れる恋は藁をも掴む

 誠治さんと隣合わせの席で映画の鑑賞が始まった。


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 映画、《薔薇の咲く肌》のストーリーは、平凡な女子大生に過ぎなかった主人公が、バイト先の夜の世界で知りあった画家に、心も身体も開花され、性愛に溺れる日々を過ごしていく。

 やがて二人は、本気で愛し合うようになるが、運命は残酷な愛をテーマに、その終わりを告げようとした。

 もうすぐこの世から居なくなってしまう、愛する男の為に身体にタトゥーをいれる。

 そのシーンは、目が釘付けになった。

 男が愛した薔薇の花をタトゥーに刻み、その愛を証明する。

 痛みに耐えて、愛の薔薇を身体に刻む姿は、観ているこっちも身体と心に痛みを感じるほどの、緊迫感が伝わった。

 タトゥーをいれ終わった彼女に、薔薇の化身となって見守り続けると、永遠の愛を男は誓う。

 圧倒されてしまうシーンが続いた。

 ラストシーンに意識がなくなっていく恋人の最期を見つめながら強く生きていこうとする、女の決意。

 宿した命を告白しながら、悲しみの中でも、
永遠の愛を手に入れた女の喜びを、主演の岬エリカは見事に演じきった。

 私は、自然に涙が溢れて止まらなくなった。
目頭をハンカチで押さえた。

 隣の誠治さんも真剣にスクリーンを観ていた。


 誠治さんが理性を心配するのも分かる気がする……


 映画の官能シーンは、岬エリカが脱ぐ事により、美しく妖艶な肌と絡み合う男優との濡れ場にはドキドキした。

 ーーエッチな気分になったりしてーー

 誠治さんとコンナコトになったら……
なんて、密かに妄想までしてしまった。