夫の家で暮らす事になりました。

 息子の太陽は、とても可愛がって貰いました。
 でも、取り上げられたような状態が続いた。

 家計を助ける為に、私は近くの工場に働きに出ました。

 当時18歳になったばかりで、工場の仕事が終わって、帰り道にすれ違う、学生さんが羨ましかった。


 家に帰っても、まともに太陽は抱かせて貰えない。

 不満ばかりが募った。

 暫くは我慢もしたの。
太陽を産ませて頂いた恩があったからね。

 帰ってからも、家事も嫁の仕事だと言われて、やらざるを得なかった。

 心身共にヘトヘトになった。

 夫に不満を言っても、助けてくれなかった。

 ストレスが溜まりました。

 私を助けてくれる人も誰も居なかった。

 次第にバカバカしくなり、仲良くなった工場の人にパチンコを教えて貰ったの。

 最初は面白いくらい勝ったわ。

 ヘソクリなんかも出来て、イライラすると、工場をサボッて朝から打っていた。

 でもさ、ずっと勝てるギャンブルなんてないよね……

 次第に人からお金を借りてまでするようになった。

 給料日には決まった額を家に入れないと、怪しまれたから、如何わしいところからもお金を借りた。

 自転車操業のように、次から次へと返済する場所が増えてゆき、それが次第に回らなくなって、隠しきれずに家族にバレました。


 夫からは離婚を言い渡され、私が作った借金は私の親が肩代わりしてくれました。

 『もう、お前とはこれっきりだ!
手切れ金だと思え!』
と最後に言われたんだ。

 太陽とも縁を切らされました。

 自分の愚かさが招いた事なのに、辛くて仕方なかった。

 生まれた土地を離れて、右も左も分からない東京を彷徨った。

 そんな時、クレッシェンドのママに出会いました。

 『学歴なくても、いろんな事情を抱えた女がのし上がるには、仕事なんて選んでらんないだろ?

 客を楽しませる愛敬があればいい。

 いい気分でお金を遣う場所を提供するのさ。

 働いている間は、そういう女を演じてくれたら、この仕事は成り立つ」

 そう言ってくれて、私を雇ってくれたんだ。


 クレッシェンドは音楽記号で、段々強くなるって意味なのよ。