合宿中も、メールや電話のやり取りはしてたんだ。

 「予程通り、半月で取れそうだよ!
俺、運動神経いいからさ!」

 「だね!
そっちはどう?
涼しい?」

 「東京よりは涼しく感じる。
自然がいっぱいさ。
旅行気分も味わえてる。
百合は栃木とか来た事ある?」

 「ないな…」

 「免許取れたら、連れて行くよ!
那須ハイランドパークもあるし」

 「行きたいな…」

 「半月の我慢!
早く、百合に会いたい!」

 「うん」

 いつもと変わらない会話だった。

 順調に仮免までいって、いよいよ帰る日を迎えた前日まではね……

 夕方に公衆電話から着信があって、『なんだろ?』って思って、出てみたら百合からだった。


 「もしもし、晶」

 「百合」

 「ごめん。
携帯、落としちゃったの……」

 「えっ!大丈夫なのか?」

 「うん………
 だから、公衆電話からなんだ。

 いよいよ明日帰るんだね。
ごめんね、晶。

 明日は朝から居ないの。

 お店の子の誕生日で、祝ってあげる約束したから……

 晶が帰ってくるのに本当にごめん!

 夜はそのまま店だから、明日は一日家に居ないんだ……」

 「なんだ……残念!
 まぁ、仕方ないよな!

 友達は大事だし、誕生日は年に一度しかないし、俺はこれからもずっと百合と一緒なんだから!」

 俺は内心がっかりしたけど、物分かりのいい男を気取っていた。


 「………うん。
ーーごめんね」

 「明後日には会える!
早速、免許センター行って、本試験受けてくるよ。
 免許証持って、百合に会いに行く。
逆にその方がカッコイイよな?」

 「うん!」


 これが百合との最期の会話になったんだ…