溺れる恋は藁をも掴む

 禁句にさえ触れなければ、百合と上手くやってゆけると思っていた。

 いつも通り、大学に行き、バイトをして、会える日は百合の顔を見に家に寄る。

 百合のお日様の笑顔を見て、また明日も明後日もそれが繰り返されると思っていた。

 親父の二周忌を同じように百合と過ごして、大学の長い夏休みに貯まったバイト代で車の免許を取る事にした。

 免許を取れば、就職にも役立つだろうし、百合を助手席に乗せてドライブにだって行ける。

 また行きたいって言っていたディズニーランドをドライブしながら連れて行ってやれるし……

 だから、合宿で免許を取る事にしたんだ。

 暫く、百合の顔が見れないのは寂しかったけど、早く免許を取って、百合との楽しい思い出をいっぱい増やしたかった。


 思えば、受験一色だった時、そんな俺を百合は支えてくれて、百合も資格試験があったりで、滅多に店を休まずに働いていたんだよな…

 二人で何処かにデートした思い出も少ない。
学生だった俺に、いつも百合は遠慮していた。

 合宿に行く前も、百合はいつもと変わらず、お日様の笑顔を見せてくれた。

 「いってらっしゃい、晶」

 いつもより少し長めにキスをして、ギュッと抱き合った。