溺れる恋は藁をも掴む

 じめじめした梅雨の時期、もうすぐ暑い夏がやってくる。

 一年前のそんな日に親父は亡くなった。
一周忌を迎えて、家族もその生活に慣れてきた。

 こんな事になるなんて思ってなかったから、最期の最期まで、俺は親父を憎んでいた。

 一周忌の法要で寺を訪れた時、雨に濡れながらも、その季節を彩るかのように、綺麗に咲いてる紫陽花。

 その紫陽花の花を眺めながら、いろんな思いを巡らせた。


 親父が亡くなって、これからの事を考えるのに嫌気がさして、どうにでもなれとヤケを起こしそうな時に百合に出会った。

 百合は俺の道標になってくれた。

 親父が百合に巡り合わせてくれたんじゃないか………?

 なんて思ったんだ。

 いや、そう思いたかったんだな。

 一周忌の法要が終わった後、俺は百合に会いに行った。