溺れる恋は藁をも掴む

 百合は大粒の涙を流していた。
哀しいと訴える涙が俺の胸に突き刺さった。

 「百合の過去なんて聞きたくない!

 百合が俺以外に抱かれた話なんて聞きたくない!

 俺は百合を裏切らないし、百合だけをずっと好きでいる自信もある。

 だから言うなよ………イヤなんだ!!

 ーー俺は百合をーー」

 俺も強がる割には格好悪く、泣いていたんだ。

 「晶の近くで生まれ育って、同じくらいの歳に生まれて、学校も一緒で、自然に惹かれあって恋をして、同じ大学目指して勉強して、同じ大学に進学して……

 なんて……
そんな叶わない妄想もしたんだよ!

 叶わないから、苦しくなるんだよ!

 私は学歴のないお水だし、晶に釣り合うわけない!

 晶が輝いてゆくのは、自分の事のように嬉しい。

 本当にそれで十分。
満足するべきだった。

 でも、どんどん好きになって、欲張りになった。

 自制が効かなくなるほど、晶に依存してしまいそうになる。

 ーー自分の足元すらしっかり見えてないのにーー 

 そんな私だから……
晶と一緒に居ると、時々、苦しくなるんだよ!!」

 泣きながら、取り乱すような口調で百合は訴えた。


 俺はさ……   
この時、もっと百合に寄り添えば良かった。


 百合の本当の哀しみや本当の姿を知るべきだった。