溺れる恋は藁をも掴む

 こんな子供時代を送り、中学に入って、野球部に入部した。

 好きな野球をしている時だけは、無心になれたんだ。

 ただひたすら球を追いかけた。

 部活を理由に、家から離れる時間を増やせたしね。


 親父は相変わらずだった。


 相変わらずでも、取引先もだいぶ増え、営業部長と呼ばれるまでの地位まで登りつめていた。

 たまに顔を合わせると………

「晶、
野球もいいが、ちゃんとした学歴をつけとけ。
学歴があれば、自分の好きな仕事を選べる。
選択肢も沢山ある。
お前が羨ましいな。
これからだもんな。
これからの生き方次第でどうにでもなるんだよな……」を繰り返し、何度もしつこく言った。


 『いちいちウザイんだよ!!』
そう言い返すのは簡単だ。

 だけど、
そのあとの予想がついた。


 家族の空気を保つには、それぞれに我慢が強いられていたのだから……