女湯の外に行くと、幸治さんが椅子に座ってた。
あ、ヤバッ
「ごめんなさい、遅くなりました。」
「大丈夫だよ。
もっとゆっくりしてこればよかったのに。」
と椅子から立ち上がる幸治さん。
「長湯は心臓に悪いかと・・・・・・。」
周りに聞こえないように呟く。
そんな小さな声も広って聞いてくれる幸治さん。
「そうだな、治ったらな。」
ほんとに治るのかな。
医者になるために大学を卒業したのに、私は自分の病気を治すことも消極的で、他人事のように捉えてて。
そして治してもらえるもんだとも、心のどこかで思ってる。
自分で治そうと思わないといけないのに・・・・・・。
「何、暗い顔してんの?
早くホテルに戻るぞ。」
幸治さんが私の荷物を持ちながら、私の手を引っ張る。
あ、手が・・・・・・
私の右手には幸治さんの暖かくて大きな手。
普段、マンションの近くでは手を繋ぐなんてできないから。
病院関係者も多いし、患者さんだっているから。
だから、今回は特別。



