~お昼ご飯、食堂にて~
「佐藤センセっ。」
幸治を見付けた進藤先生が、お昼の定食を手にして声をかける。
『あ、進藤先生。お疲れ様です。』
「お疲れっ。って、かなり疲れた顔してる、佐藤先生。」
同じように定食を持った幸治は、進藤先生のそばの机に定食を置いて、進藤先生と腰を降ろした。
『受け持ちの患者に手を焼いてて。』
「いくつ?」
『16歳の高校一年生です。』
食事に手をつけながら幸治が話す。
「あ~難しい年頃だねぇ。
でも、かなちゃんもそのくらいにここに来たんでしょ?」
『そうですね。かなにはかなり厳しくしてましたけど、今回の子は、心臓が良くないんで、厳しくもできず・・・・・・。』
「それは尚更大変だね。小児科は本当、治療だけじゃないからね。で、その子が何したの?」
『違う階でジュースを飲んでて。
それが昨日の昼のことなんですが、それをかなが見付けて教えてくれて。
夜に知ったもんですから、そこから検査して。
そのあと消灯前に脱走して、発作を起こして・・・・・・。
少し走ったみたいなんですが。
それもまた、かなが見付けてくれて。』
幸治がそこまで言うと、進藤先生がハッとした。
「それで~!」
納得した顔をする進藤先生。
『何がですか?』
不思議がる幸治。
「かなちゃん、今朝から熱が出ててね。
肺の音もあまり良くなくて。」
『そうだったんですか!?知らなかった。』
「かなちゃんのことだから、『忙しい幸治さんに、迷惑かけないように』って、黙ってるんじゃない?」
『はは、進藤先生・・・・・・。かなのこと、本当に詳しいですね。』
「そりゃ、何年も主治医してるから。
さっき見に行ったけど、昼も食べずに寝てたよ。
昨日のことが、相当疲れたのかもね。」
幸治は、進藤先生の話しを聞いて、いてもたっていられず、ご飯を掻き込んで、食堂を後にした。
「はは、微笑ましい姿。」
進藤先生はそんな幸治を暖かい目で見送った。



